No.85 体重が増えればキレは増すという考え方

No.85 体重が増えればキレは増すという考え方

スポーツ経験者であれば、

「体重を増やすと重くなる』

「無駄な筋肉を落とせ』

「キレがなくなる』

など、言われた事や、聞いた事があると思います。

今回はそれついて解説していきます。

 

まずここでいう体重は脂肪を除いた筋肉などの、”除脂肪体重”である事を前提とします。

当然、体脂肪率が9%の選手が20%になればそれは脂肪の増加であり、体重に対しての筋肉量が落ちるので身体を動かすことも大変になります。

まずこれが軽い方がいいと言われてしまう理由の1つかと思います。

 

次に”筋肉がつくと重くなる、キレがなくなる”

 

についてですが、これに関しては詳しく解説していきます。

まず、大体のスポーツ競技者はオフシーズンに筋肉を太くし、太くした筋肉をパワーに変換して、シーズンに向かいます。

これをピリオダイゼーションと呼びますが、フィジカルコーチは計画的にトレーニングや練習メニューを組み立て体力を向上しています。

このオフシーズンの筋肉量アップをさせる為には、当然筋肉を太くするトレーニングが必要になります。

以前のブログにも書いていますが、太くなる筋肉はいわゆる速筋線維で、スピードや力があるがスタミナがないという特徴があります。

No.57 赤い筋肉と白い筋肉どちらを鍛えたいですか?

 

この筋肉を太くする事で体重の増加が起こるわけですが、この筋肉をつければスピードや力が強い筋肉が太くなり土台ができます。

ここですでに、体重が増えるとキレやスピードが落ちるという事に矛盾しています。

ではなぜ筋肉を肥大させる時期は、実際に身体が重たく感じるのか…と思った方もいると思います。

ご自身で勉強されている方はわかると思いますが、体重を増やすためにはカローリーが必要です。筋肉量を増やすにも脂肪を増やすにも同じです。

という事は筋肉を大きくする事を目的としたオフシーズンのトレーニング中は当然脂肪も付くわけです。

 

例えば…

選手Aシーズン後筋肥大期
体重70kg76kg
体脂肪率9%12%
体脂肪量6.3kg9kg
筋肉量58kg61kg
スクワットMAX120kg150kg
スクワット体重比171%197%

になったとします。

筋肉が増えても脂肪も増えて体脂肪率も上がっている事がわかりますよね?

この状態ではもしかしたらスクワットは強くなっていてもスプリントは遅くなっているかもしれません。

これが、『キレがなくなる、重くなる』と言われる最大の理由だと私は思っています。

ただし、実際にこの時期にスプリントが遅くなっていたとしても、指導者としては想定内だという事です。

どういう事かというと、先程も書いた通り、オフシーズン中は前半に太くした筋肉をオフ後半に試合に向けてスピードや力をつけるトレーニングを行います。

両方とも先ほどの速筋線維なのですが、オフ後半は速筋線維の中のさらに速くて強い速筋線維の強化をしていきます。

(今回は内容は省きます)

と同時にシーズンに向けて筋肉量をなるべく落とさないようにウエイトのコントロールもします。

するとどうなるか…

選手A筋肥大期シーズン前
体重76kg72kg
体脂肪率12%9%
体脂肪量9kg6.48kg
筋肉量61kg60.5kg
スクワットMAX150kg145kg
スクワット

体重比

179%201%

 

となります。

上のシーズン後と比べてみると…

選手A昨シーズン後今シーズン前
体重70kg72
体脂肪率9%9%
体脂肪量6.3kg6.48kg
筋肉量58kg60.5
スクワットMAX120kg145kg
スクワット

体重比

171%201%

になったとします。

どうでしょうか?

体重は増えているが、筋肉量やスクワットのMAXの体重比が上がっているのがわかると思います。

もちろんこれはうまくいったケースですが、理論的にもフィジカルコーチのビジョン的にもこのような推移になれば、体重が増えたとしても、体重あたりの力やスピードが上がりパフォーマンスを上げる要素の一つになるはずだと考えます。

あとは競技特性によって持久力に特化しているのか、パワーに特化しているのか、中間かによってスキルの練習内容の有酸素運動の量が変わってくる(遅筋線維の活躍度)ので、体型にも各スポーツ変化が出てきます。

ですので、決して体重(除脂肪体重)を増やすことでスピードは落ちないですし、身体を動かすこともむしろ軽く感じるはずだということがわかると思います。

フィジカルスタンダードを上げるためにもこの理屈も理解しているといいと思います。

 


TTBパーソナルジム 八丁堀

S&Cコーチ/パーソナルトレーナー

木村聡

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